疾患情報研究分野(今井研究室)のウェブサイトへようこそ。当研究室は2010年7月に神戸の理化学研究所・多細胞システム形成研究センターにてスタートし、は2017年4月に九州大学に移転してきました。旧研究室のウェブサイトはこちら

我々ヒトの精神活動を司る脳は、約1,000億もの神経細胞からなる複雑なネットワークです。脳の神経回路の動作原理や構築原理を理解することは、神経疾患の理解や克服につながるだけでなく、我々の精神世界の根源を巡る人類の知的挑戦という側面も有しています。このような複雑な脳も元をたどればたった1個の受精卵にまで遡ることができます。従って、神経回路の発達過程を研究すれば我々の脳の本質に迫ることができると考えています。

当研究室では、神経回路を機能動態、回路構造基盤、発達機構という3つの異なる側面からアプローチすることで、脳の動作原理・構築原理の解明を目指しています。特にマウスの嗅覚系を1つのモデルとして、感覚情報処理の基盤や発達機構を回路レベル、分子レベルで解明することに取り組んでいます。また、神経科学分野では新しい手法の開発が分野の発展を牽引してきたという歴史があります。我々も、脳組織の透明化法や画像解析法など、神経回路の可視化ツールを独自に開発することで、神経回路の機能や病態に新たな「光を当てる」ことにも取り組んでいます。

当研究室では全国から大学院生や研究員を募集しています。留学生も歓迎です。学部生や海外の学生・研究員の短期滞在も積極的に受け入れています。神経科学分野においては様々な分野の知識や独創的なアイデアを総動員させることが重要であり、出身学部は問いません。特に神経生理学、分子・細胞生物学、数理・情報科学分野からの応募を歓迎します。 研究室の訪問も歓迎いたしますので、興味をお持ちの方は今井までお気軽にご連絡ください。

感覚情報処理を行う神経回路の動作原理と形成原理

複雑な脳を相手にしながらも普遍的な原理を明らかにするためには、最適なモデル系を選ぶことが重要です。我々の研究室では、これまで特にマウスの嗅覚系に着目して研究を行ってきました。

我々の脳は、五感を通して様々な外界の情報を受け取っています。これを支えているのが、脳に作られる「神経地図」です。 視覚や嗅覚といった感覚情報は、脳において「神経地図」として2次元的に表現されます。 例えば、網膜に映し出された視覚情報は、脳の視覚を司る領域に反転画像として2次元的に表示されます。 一方、匂いの情報は鼻腔内の嗅上皮において約1000種類の匂いセンサー(嗅神経細胞)によって検出されており、その情報は脳の嗅球と呼ばれる領域において、1000個の糸球体マップに集約され、表現されます(図は透明化した嗅上皮と嗅球。嗅球の糸球体が丸く見える。)。嗅球内では1000種類の感覚入力が演算され、行動や記憶を司る高次領域へと出力しています。

嗅球は感覚入力を次の神経細胞に受け渡すための単なる中継地点という訳ではありません。近年、嗅球内における非常に巧妙な演算原理が明らかになってきました(詳細はこの総説に詳しく書いています)。我々はこの嗅球に着目し、動作原理、回路構造、回路発達の研究に取り組んでいます。

最近では嗅覚系にとどまらず、大脳皮質の回路発達の研究や、病態の理解にも取り組んでいます。

また、とりわけ神経科学においては新しい技術の開発によって新しい問題に取り組めるようになり、分野が発展してきました。我々も組織透明化法の開発(右はCell Reports誌の表紙,2016)など回路構造を研究するためのコネクトミクスのテクノロジー開発を行ってきています。回路発達のネットワーク動態の変化として捉えるためにはシステム神経科学のアプローチも強力です。我々は数理科学的なアプローチによる回路動態の研究にも取り組んでいます。

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